日活　　　　　　1955 (昭30)年キネマ旬報ベストテン第６位 　　東北地方の田舎町の警察署のこと。署には頑固な石割署長（三島）の下に、金子主任（織田）・赤沼主任（十朱）・人情家の吉井巡査（森繁）・純情な花川巡査（三国）・剣道自慢の署長の相手役藪田巡査（宍戸）・倉持巡査（殿山）達が勤務していた。 　　刑事部屋は、毎日のように種々の人間で大いに賑わいである。今も窃盗容疑の桃代（小田切）や神社荒しの容疑者でお人好の岩太（伊藤）達が取調べを受けている。 　　一方、駅前では戦争で我が子を失くしてから頭が変になった村田老人（東野）が、交通整理中でだった。かくして、田舎町の様々な人間模様が展開する。 　　ある日、吉井巡査は、ユキコ（二木）と言う５歳ほどの女の子と赤ん坊の、姉弟の捨子を発見した。預ける所もないので、赤ん坊は料亭の内儀ヒデ（沢村）が預かり、ユキコは自分が引き取った。 　　花川巡査は、もぐりの周旋屋である杉田モヨ（杉村）に身売りされかけた、二田アヤ（岩崎）と言う女性を保護した。だが、アヤはお金のためにまた町を抜け出そうとしたので、彼は給料を割いてお金をやるのだった。 　　モヨは人身売買の件で検挙されても、まるで平然としていた。セイ（千石）と息子の竹雄（香川）が万引で捕まって来たが、彼女は亭主に逃げられたらしい。 　　そんなある日、郷里出身の通産大臣（稲葉）が帰郷し、町長（三木）や署長等の役人は大騒ぎになった。交通安全週間中にも拘わらず、大臣一行の傍若無人な振舞に、町の人々は唖然とした。 　　その夜、母親シズ（坪内）が、捨て子の２人を引き取りに署へ来た。しかし、子供達が幸せだと知ると、安心し子供の顔を一目見て東京へ去った。 　　セイと竹雄が無銭飲食で挙げられ、セイの夫重四郎（天野）も取調べを受けけていたが、金子主任に諭されて一緒に帰って行った。 　　花川巡査はアヤから手紙を受け取ったが、中には彼に返す為のお金と真赤な紅葉が入っていた。